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由美と行く 
万葉紀行

14、

 さて、高天原を追われた須佐之男命は、出雲国まで来ると、箸が河を流れ下ってきたので、上流に人がいると思い、上っていった。
 すると、そこにいた老夫婦は、童女がおろちに食べられてしまうと泣いていた。
 そこで、須佐之男命は、その娘の櫛名田比売を手中にし、酒に酔わせて八俣のおろちを退治してしまう。

 そして、須佐之男命は、櫛名田比売とともに、出雲の須賀の地に宮を作った。
 その時に、そこから雲が立ち上ったので、須佐之男命は歌を詠んだ。
 〈八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに 八重垣作る その八重垣を〉
 そこで、櫛名田比売との間に八島士奴美神が生まれた。
 八島士奴美神から五代目が大国主神で、またの名を、大穴牟遅神、葦原色許男神、八千矛神、宇津志国玉神と言い、合わせて五つの名がある。

 さて、その大国主神の兄弟には、八十神があったが、八上比売と結婚しようと稲羽へ行く時、大穴牟遅神に袋を背負わせて、従者として連れて行った。
 気多の岬で、その神々に教えられた通りにした兎は、身体の皮が裂けて、痛くて苦しみ泣き伏していた。
 そこにやって来た大穴牟遅神は、その兎の話を聞き、「真水で身体を洗い、蒲の花を敷きつめた上に横たわれば治る」と教え、兎の身体は元通りになるのであった。

 さて、八上比売が八十神に「私は、大穴牟遅神と結婚します」と言うので、神々は怒って大穴牟遅神を殺そうとする。
 そして、大穴牟遅神は木の国に逃れるが、さらに追いかけられ、結局は、須佐之男命の元に向うことになる。
 須佐之男命の所に着いたところ、娘の須勢理毘売が出てきて、大穴牟遅神と結婚する。
 須佐之男命は、大穴牟遅神を見て、「これは、葦原色許男命という者だ」と言ってすぐに呼び入れて、蛇の室に寝させるが、須勢理毘売が大穴牟遅神を助けてしまう。

 再び大穴牟遅神が来た日の夜、次は百足と蜂の室に入れるが、また須勢理毘売が助けることになる。
 そこで、須佐之男命は、野の中に射込んだ矢を大穴牟遅神に取ってくるように命じる。
 大穴牟遅神がその野に入ると、須佐之男命は、すぐにその野の周囲を焼いた。
 大穴牟遅神が、逃げ道に困っていると、この時は鼠に助けられる。
 次に須佐之男命は大穴牟遅神を家に連れて入り、大きな部屋で頭の虱を取るように命じるが、須佐之男命の頭には、百足がたくさんいた。
 そこへ、その妻須勢理毘売が来て、大穴牟遅神を助け、須佐之男命は寝てしまう。
 とうとう、大穴牟遅神は、須勢理毘売を背負い、須佐之男命の生太刀と生弓矢と、天の沼琴を取って逃げ出した。

 須佐之男命は、黄泉比良坂まで追いかけるが、遥かに望み見ながら、「お前が持っているその生太刀と生弓矢で異母兄弟の神たちを追い払い、お前は大国主命となり、そのわが娘を正妻としろ」と大穴牟遅神に言うのであった。
 それで、大穴牟遅神は、その太刀と弓矢で八十神を追い払い、初めて国を作った。
 また、八上比売、須勢理毘売、沼河比売、多紀理毘売命、神屋楯比売命、鳥取神を娶って、多くの神を生んだ。
 ここまで読むと、恒之は、少し手を休め、そして今までの所を振り返ってみた。
 この『古事記』の編纂の意図は、序文にあったようなことではなく、大きく掛け離れた所にあるように感じられた。

 そして、『帝紀・旧辞をよく調べ正し、偽りを削り真実を定めて撰録し、後世に伝えようと思う』という序文は、あくまで表向きの言葉としか思えなかった。
 とりあえず、今までのところは、大穴牟遅神が、須佐之男命から大国主命になるように言われ、国作りを始めている。
 ところが、高天原を治めるように言われていたはずの天照大御神が、地上界の支配に乗り出し、事態は一変する。

          



                       

    
     邪馬台国発見

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