はじめに古事記が編纂されてから、今年で千三百年目の節目を向かえています。それが、我が国最古の歴史書ともされていますが、そこにおいては、我が国の成り立ちの歴史は、混沌とした神話の世界に描かれています。 日本という国がどのようにして成立したのか、それは今をもって我が国の庶民には明らかにされていません。 我が国の歴史は、この列島の範囲内のみの検証では、その姿に到達することは困難です。大陸に残されている史書等と突き合わせることなくして解明はできません。例えば淡路島の歴史を探るのには、列島全体の歴史との関連抜きには有り得ないのと同様です。 それは、そういう関連をもたらす人の流れがあったからに他なりません。 樂浪海中有倭人、分爲百餘國、以歳時來獻見云。紀元1世紀後半に、後漢の班固が漢書を作成し、そこでは、この列島には百余国があって、時々朝貢していたと描かれていました。これが、現存するこの列島に関する最古の記述です。そして、その後の、三国志魏書烏丸鮮卑東夷伝倭人条(魏志倭人伝)、後漢書、宋書、隋書などにも貴重な資料が残されています。我が国の成り立ちの歴史、いわゆる記紀認識の基本は、この列島から人類が誕生したように描いており、大陸からの渡来人の歴史を消し去っています。 この列島から人類は誕生してはいませんし、過去、規模の大小はあるものの、数多くの民族が渡来しています。 古代にあっては、今のような大陸と、この列島を遮る国境はありません。ですから、中央アジアにまで及ぶ、このアジア全体をもエリアにした民族の興亡を検証しなければ、この列島の歴史の全体像は見えてきません。 私は、二〇〇八年五月、当時の認識の到達点に基づき『新説「日本古代史研究」』という拙書を出版するに至りました。それからおよそ四年、我が国における古代史研究は、多くの研究者によって深められて来ているようですが、全体としては、残念ながら記紀認識を克服できる状況にはなく、むしろ、逆行する動きすら強められています。 このたび、前書発行後の検証による、新たな認識の到達点に基づき、本拙文をまとめるに至りました。 もし、皆様の何らかのご参照にしていただくことができるのなら、それ以上の喜びはありません。 また、まだまだ検討を深めていく途上にありますので、ご意見・ご批判を賜れば幸いです。 何卒、よろしくお願い申し上げます。 2012年1月1日 みんなで古代史を考える会 西 山 恒 之 |
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